こんにちは。12月になりました。東京は現在、綺麗に紅葉しています。

愛犬とのお散歩コースの公園は、枯れ葉が日に日に増えています。愛犬が枯れ葉の上を歩く、かさかさ、という音がなんとも可愛いくて、枯れ葉が多めの場所を選んで散歩しています。

12月はクリスマス、年末年始の帰省やご挨拶などでギフトや手土産が多い月ですね。自宅で飲むコーヒーもクリスマスや1年の締めに、ちょっと良いコーヒーが飲みたくなります。そこで今月、私が焙煎するのは、自宅用にも、ギフトや手土産にもできる、エチオピアの中深煎りと、コロンビアの深煎りです。

エチオピア グジ ゲイシャ ナチュラル 中深煎り(シティロースト)

エチオピアはコーヒー発祥の地。このコーヒー豆は、グジという地域で生産されました。グジはシダモという有名な生産地に隣接しています。そのため、グジ産のコーヒーはこれまでシダモと表記されてきました。ここ数年、グジのコーヒー豆が良質で評価が高いことから、グジと地域を限定して流通することが増えました。

「ゲイシャ」とはエチオピアのゲシャという地域で発見されたコーヒーの種類のこと。病気に弱く、収穫量が少ないため、中々広まらなかったコーヒーです。パナマに渡り、エスメラルダ農園が栽培したものが品評会で高評価を得たことから注目され、様々な地域で栽培されるようになりました。

このグジのゲイシャは、天日干しして水を使わない、ナチュラル、と呼ばれる方法で精製されています。ナチュラルはコーヒー豆が持つ本来のフルーティさを楽しめます。

普段、私の店では浅煎りのミディアムローストをお勧めしています。浅煎りではベリーの香りと上品な甘味、明るく柔らかい酸味があります。今回は中深煎りのシティローストに焙煎しました。ベリーの香りは控えめになり、柔らかい甘さとコクで、落ち着いた上品な口当たりに変化します。

中深煎りにした理由は、12月のイベント、クリスマスと年末年始をイメージしたからです。クリスマスや、友人同士で集まる時に食べる機会の多い、洋菓子やケーキと一緒に楽しむコーヒー。イベントのギフトや手土産にぴったりな、華やかで皆で美味しく飲める味のコーヒー。そして、今年も1年頑張った、自分と大事な人へのご褒美コーヒーをイメージしました。

なめらかさを引き出すために、クレバードリッパーで抽出。クレバードリッパーは、お湯を目盛りまで注ぎ、数分したらサーバーの上に置くだけ、という手軽なドリッパーです。コーヒー粉がお湯に触れる時間が長いため、ペーパードリップよりもコクがあり、フレンチプレスよりもまろやかな口当たりになります。

私がお土産にすることが多い、アンリシャルパンティエのザ・ショートケーキとフィナンシェと一緒に頂きました。

ザ・ショートケーキはシルキーで上品な甘さの生クリームにしっとりしたスポンジ、ほんのり甘いシロップがけのイチゴが乗っています。コーヒーと一緒に楽しむことで、ショートケーキのイチゴと、ゲイシャの控えめなベリー感が合わさって、落ち着いた甘さのベリー感から、ゲイシャの柔らかいコクへ。余韻はケーキとゲイシャの上品な甘さに変わります。

フィナンシェはバターの香ばしさと、しっとりした口当たり。バターの香ばしさの後にゲイシャの上品さから、余韻はほのかな甘いベリーを感じます。ケーキとフィナンシェで異なる余韻で、ペアリングの面白さを感じました。

コロンビア ナリ―ニョ スプレモ2000 深煎り(フルシティロースト)

コロンビアは国民の10人に1人がコーヒー関係の仕事に従事している、コーヒー大国です。このコーヒー豆の産地、ナリ―ニョはアンデス山脈の麓、コロンビアの南部の地域です。スプレモとはコロンビアのコーヒーの格付けのこと。大きさで選別された、大粒の豆のことです。2000m以上の高地で栽培されて、手摘みで収穫。水を使うウォッシュド、と呼ばれる方法で精製されています。ウォッシュドは出荷までに手作業が多いため、欠点のある豆が省かれ、すっきりした飲み口です。

私の店では、通常はハイローストという中煎りをお勧めしています。マイルドでバランスがよく、柔らかなコクと口当たりからジューシーさが広がります。今回は和菓子、和食と合わせる上質な深煎りをイメージ。しっかりしたコクと甘さ、まろやかな苦みと、軽くスモーキーな香りを狙って、フルシティローストに焙煎しました。

抽出した日は焙煎から4日目。3日目に試飲したら目指す味より少し軽かったので、しっかりしたコクとビター感を目指し、コーノ式のドリッパーで抽出。最初はじっくり、ててて、と雫を垂らすように中央だけ蒸らします。少しずつ湯量を増やして、後半はなみなみと注いで抽出。ほぼ狙い通りに抽出できました。

ナリ―ニョの深煎りと合わせたのは、とらやの羊羹です。とらやは全国にたくさん店舗があり、どこでも購入できます。それでも、頂いた時の重みから感じる高揚感と、羊羹の小箱が並んでいる様子を見た時の嬉しさは格別です。私は羊羹がちょっと苦手ですが、とらやの羊羹は別で、特別に嬉しく感じます。

今回は私がいちばん好きな、黒糖風味の「おもかげ」と合わせました。黒糖のスイーツは濃厚なコクと深い余韻の甘味が多い中、おもかげは控えめで上品な黒糖の風味が最初から余韻まで続きます。ナリ―ニョの深煎りと合わせると、おもかげの上品な風味の後に、ナリ―ニョの甘さ、まろやかな苦み。そしておもかげの余韻が程よく残ります。そしてスモーキーな香りは弱まり、邪魔をしません。
ナリ―ニョの風味は出汁の甘さとも相性がよいので、家庭料理、特に年始のおせちともぴったりです。

人が集まる場はコーヒーを皆で楽しめます。クリスマス、年末年始の大事な人と過ごす時間に、ぜひコーヒーをお供にしてみて下さい。

Written by

ユアサイドコーヒー 編集長

焙煎士